倒れた稲を前に、今年のお米のことを考える

農園だより

天高く馬肥ゆる秋、といいます。

今年はサンつがるが例年に負けない出来となり、樹の下で味見をしながら収穫していると、いかに体を動かしても「肥える」のが避けられないくらい、美味しく出来ています。しかし、馬(=私)ではないもう一方の「天」の様子はというと、低気圧続きで、なかなか高くなってくる気配がありません。

今回の農園だよりは、りんごよりもお米のことが中心になります。

まずは、この田んぼの様子。我が家の目の前にある、他の方が耕作する田んぼですが、まるで寝起きの髪の毛のように!乱れて倒れています。

これは、9月に入ってからずっと続く雨が為した悪戯です。こうなると、さあ収穫が一大事です。まず、長雨で倒れ、水に浸かったお米は発芽するリスクもあり、一般的に品質が低下します。

ただ、それ以上に問題なのがコンバインです。

稲を刈り取りながら脱穀までしてくれる大型農機「コンバイン」には、バリカンのように稲を刈っていくため、一度倒れた稲を引き起こす装置が付いています。ところが、あまりに倒れ過ぎていると、これがうまく稲を起こしてくれません。

おまけに、コンバインの「刃」にあたる部分の高さ調整が非常に難しくなります。倒れた稲を拾おうとして低く設定すると、今度は土まで巻き込んでしまい、その結果、刃の部分が目詰まりします。さらに最悪の場合、ぬかるんだ田んぼにコンバインそのものがはまり込み、立ち往生することもあります。

長雨は、単に作業効率を落とすだけではありません。

1,000万円以上もするコンバインの故障にもつながりかねず、刈り取りには通常の3倍以上の時間がかかることもあります。つまり、総じて相当な追加コストがかかってしまうのです。

我が家のお米は「はざ掛け米」ですので、コンバインほどのリスクはありませんが、それでも刈り取り時には同じように機械がぬかるみにはまる問題が発生しますし、雨に濡れた稲わらを運んで掛ける作業は、重さが増して大変な重労働になります。

幸い、うちのコシヒカリの田んぼは、奇跡的に倒れた箇所が周囲の田んぼよりも少なく済んでいます。また、短稈のプリンセスサリーは今のところ倒れる気配がまったくなく、その点では精神的に穏やかでいられます。

ただ、今回お伝えしたいのは、わが家の田んぼがどうだったか、ということではありません。私が心配しているのは、こうした長雨によるコスト増が、日本の稲作にとって致命傷になりかねないということです。

お米づくりには、苗代、肥料や農薬、燃料、人件費、農業機械の減価償却費、水路の維持費など多くの費用がかかります。近年は資材価格そのものが上がっているうえ、今回のように雨が続けば、通常なら一度で済む作業に余計な時間がかかったり、機械を動かす時間が増えたりします。条件の悪い田んぼほど、その負担はさらに大きくなります。

一方で、今年、農協から農家に示されている米の概算金は、昨年と比べて大きく下がっています。生産にかかる費用は高止まりしているのに、農家が受け取る米の価格は下がる。経営によっては、手間をかけて作っても十分な採算が取れない水準になりかねません。

作れば作るほど苦しくなり、おまけに米づくりは重労働です。そんな状況で、一体誰が「これからも米を作ろう」と思えるでしょうか。しかも、地域で田んぼを支えている担い手の多くは高齢です。言ってみれば、「いつリタイアしてもおかしくない、常に準備万端」の状態。今いる農家がもう続けられない、と判断したとき、その田んぼを次に引き受ける人がいるとは限りません。

千葉や名古屋をはじめ、日本各地で豪雨による災害が発生しています。知人やお客様の様子が気がかりで、連絡を取ることも多いのですが、農業の現場から見ると、この長雨も十分に「災害級」のインパクトがあります。

ある程度の経営規模があり、保険などに加入している農家であれば、何とかしのぐことができるかもしれません。しかし、小規模農家や、もともと厳しい経営状態にある営農組合にとっては、こうした年が致命傷になる可能性があります。

だからこそ、こういうケースでは何らかの公的支援があってほしい、と願うばかりです。稲とともに農家まで倒れてしまえば、その先には、国民の食卓の危機があります。

「お米が高い」「安くなった」という店頭価格の話だけでは見えにくい、田んぼの中で今起きていることや現場で感じている危機感を、ぜひ皆さまにも知っていただきたいと思い、今回はメルマガに書かせていただきました。

ちなみに、お天気次第ではありますが、今週末の9月19日(土)~20日(日)に稲刈りを予定しています。

昔ながらの「はざ掛け」を体験してみたい!という方は大歓迎いたします。ただし、はざ掛けは見た目以上になかなかの重労働。稲束を運び、持ち上げ、ひたすら掛けていく作業が続きますので、その点はどうぞ覚悟を(笑)。

その代わり、ごはんと寝床(※いずれも質素です)はこちらでご用意します。秋の田んぼで一緒に汗をかいてみたい方は、ぜひご連絡ください。


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